第2回 高齢になると心配 犬と猫の心臓病

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第2回 僧帽弁閉鎖不全の診断・治療、そして新しい知見

前回第1回では、僧帽弁閉鎖不全症についてお話しました。理解いただけましたでしょうか?

では、実際に心臓の病気の検査は、どのような検査を行うのでしょうか?

基本的に胸部レントゲン検査を行い心臓大きさを評価します。そして心拡大が認められた場合、心臓の超音波検査を行います。超音波検査では、心臓内腔の構造や弁膜の構造、動き、異常な血流、血流の方向や速さなどを計測し診断や治療効果の判定を行います。心臓超音波検査時には心電図を装着し検査を行うため不整脈が認められた場合、心電図検査が行われる場合もあります。また、心臓病に罹患していると高血圧症を伴うことも多々あり、血圧測定も基本的に実施します。これらの検査で統括して僧帽弁閉鎖不全症と診断された場合、治療開始となります。

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現在推奨される治療は・・・

治療は、まずベトメディンという強心薬での投薬治療となります。薬の種類にもよりますが、フレーバーがついているものがあるため、犬への投薬ストレスも少ないと思います。最低用量から開始し、定期的な心臓検査より進行が見られた場合少しづつ強心薬の増量をはかり、コントロールが困難な場合、利尿剤や血圧降下剤を併用し心負荷の軽減に努めます。

心臓病に罹患した場合、1-3ヶ月毎の定期検査がとても大切で、レントゲン検査や超音波検査で心臓病の進行状況を把握し治療方針を立てます。そしてこの定期検査とともに重要なのが、ご家族のペットの状態把握です。先に述べた咳や運動不耐性の症状に変化がないか、この変化がダイレクトに心臓病の進行状況と相関するため変化が見られる時は、当然早めの検査が必要です。

どのくらい生きれるの?

そして一番心配になるのが、僧帽弁閉鎖不全症の予後かと思います。僧帽弁閉鎖不全症に罹患し、一度でも肺水腫の既往がある場合、中央生存期間は267日と言われていて、決して予後良好とは言い切れません。このことからも早期に症状に気づき、早期治療が大切か理解いただけるでしょう。

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この病気でまた厄介なことがあります。

心臓以外の臓器にも影響が出始める。

まず一つは、この僧帽弁閉鎖不全症に罹患している犬は気管疾患の併発が多いという点です。咳という症状が心臓疾患と類似しているため、鑑別が難しくなります。胸部レントゲン検査や心臓検査により鑑別し、投薬治療での反応見てきちんと鑑別し、気管疾患がある場合心臓病治療に並行する必要があります。鑑別をきちんと行い的確な治療をしてあげましょう。

二つ目は、腎不全を併発しやすいという点です。心臓と腎臓の病気は密接な関係を持っています。腎臓は血液中の老廃物を尿にかえる働きをしています。心不全を起こして血液の流れてくる量が減ると、腎臓は尿が作れないため脳に危険信号を出します。すると「水分をたくさんとって血液を作れ!」と、脳が命令を出すため、たくさん水を飲むようになります。しかし水を飲んでも血液は心不全のために思うように流れません。そのまま腎臓で尿を作れない状態が続くと、毒素が体に溜まり「急性腎不全」を起こして命を落とすことがあるのです。もちろん適切な治療を受ければ「腎不全」は回避することができます。

心不全の犬に食事療法って必要なのか?

ちなみに心臓病の場合、塩分などの食事も気になる点かと思います。現在明確な食事療法はありませんが、肺水腫の既往がない心臓病の場合は塩分やタンパク質に配慮されたシニア総合栄養食が一般的に推奨されていて、さらに進行した肺水腫の既往がある心臓病の場合がさらに塩分を制限した食事が良いとされています。

そして、何より私が大切としていること・・・それは体重です。

数年前まで心臓の負荷を軽減するため心臓病が発覚した時点で、獣医師は強く減量を指示してきました。しかし、現在減量は不必要という知見に変わっています!

心臓病がある時点で、心臓には負荷があり健常な心臓に比べ心拍数が上昇しているため心臓でのエネルギー消費量も多くなっています。そのため現体重より減量してしまうと、さらに心臓病が進行した時に心臓でのエネルギー消費が増大し、体重が減り体力(筋肉量)維持が困難となってしまい、予後不良へのリスクが高まります。体重維持を心がけましょう。

また、先日のFASAVAの講義の中で取り上げられた今話題となっているホットニュースは、犬で拡張型心筋症が増えているという内容でした。ボクサーで多い拡張型心筋症が、他の犬種でそうか傾向にあるようです。この拡張型心筋症に罹患した犬の環境など調べてみると、グレインフリーの食事を与えている犬に拡張型心筋症の罹患が増えているのではないかという報告でした。因果関係はまた不明ですが、どうやらタウリン欠乏により発症しているという見解がされていてタウリン補充にて改善されているようです。今食事に気をつけている方が多い中、グレインフリーの食事を与えている方は注意された方が良いでしょう。

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その他の心臓病

もちろん心臓病は「僧帽弁閉鎖不全症」だけではありません。他にも注意すべき心臓病がいくつかありますので、それぞれ簡単に解説しておきましょう。

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◉肺動脈狭窄症

 全身を巡って老廃物を含んで心臓に戻ってきた血液は、まず右心房に蓄えられます。次に三尖弁という弁を通過して右心室へ流れます。さらに右心室から肺へ血液は流れるわけですが、ここで血液が通る血管が肺動脈です。この肺動脈の一部が生まれつき狭くなっている状態が「肺動脈狭窄症」です。肺動脈の入り口には、僧帽弁と同じように逆流を防ぐ肺動脈弁があります。この肺動脈弁がうまく働かず、血液が正常に流れないものは「肺動脈弁狭窄症」と呼ばれます。流れにくい血液を右心室が頑張って肺へ送り出そうとするため、右心室はオーナーワークになり、筋肉が肥大していきます。狭くなっているわけですから、スピード違反のような速さで血液が通過することになり、肺動脈にも負担がかかります。

【症状】

 生まれつきの病気ですが、狭窄の程度によっては症状が現れないまま寿命まで生きられるケースもあります。しかし、たいては心臓にかかる様々な負担が原因となって、心不全や不整脈を起こします。具体的な症状としては「僧帽弁閉鎖不全症」と同じように、疲れやすい、動きたがらない、食欲不振、突然パタンと倒れるなどがみられます。

◉動脈管開存症

 犬の先天性心血管奇形でもっとも多く見られる病気です。動脈管とは子犬が母犬のお腹の中にいる間、肺動脈から大動脈への抜け道になっていた血管のことを言います。生後、肺で呼吸をし始めるとこの抜け道は必要なくなり、自然に閉じるのが普通です。この動脈管が閉じることなく残っているものを動脈管開存症と呼びます。全身に流れるべき血液の一部が大動脈から肺動脈へ流れるため、肺や心臓に負担がかかります。動脈管が広くあいているほど流れる血液の量が多くなり、症状が重くなります。先天的にかかりやすい犬種には、シェットランド・シープドック、ウェルシュ・コーギー・ベンブローク、トイ・プードル、ヨークシャ・テリアなどがあります。

【症状】

動脈管太くない場合は、症状も軽度で、ある程度の年齢になるまで気付かれずに過ごすこともあります。しかし重度の場合には幼いうちに「咳」や「呼吸困難」の他に、「食欲低下」「動きたがらない」などがみられ、場合によっては成長が妨げられ成長できないこともあります。

◉心筋症

 心臓の筋肉・心筋に異常が起き、心臓の機能に問題が起きた状態を言います。筋肉が厚くなる肥大型心筋症は猫に多くみられるもので、犬にはあまり発症しません。反対に筋肉が薄くなる拡張型心筋症は、大型犬に多くみられます。左心房と左心室の壁が薄くなり、心臓がドクンドクンと収縮する力が低下してしまいます。そのために十分な量の血液を全身に送ることができず血流が足りない状態になります。

【症状】

拡張型心筋症では、初期には症状はみられないこともあります。進行すると「食欲不振」「疲れやすい」「咳」などが見られるようになり、さらに重症化すると「呼吸困難」や「失神」を起こし命に関わることもあります。

◉心室中隔欠損症

 左心室と右心室を隔てている壁に、生まれつき穴があいている状態です。そのため本来の流れとは逆に、左心室から右心室に血液が流れ込み右心室に負担がかかります。症状が悪化すると、肺げの負担も大きくなっていきます。穴が小さい場合は、自然に閉じることもあります。

【症状】

穴が小さい場合は、ほとんど症状が出ないケースもあります。ただhし聴診器で聴くと、心雑音が聞こえます。重いケースでは「咳」「動きたがらない」「食欲不振」「呼吸困難」などが見られます。「発育不良」を起こすこともあります。

◉不整脈

 不整脈はそのものは病気ではなく、ひとつの症状になります。標準的な成犬の1分間の心拍数は小型犬で60~80回、大型犬で40~50回が正常です。この基準値に対して、安静状態の1分間の心拍数が一定でしない場合を不整脈と呼びます。興奮した時やドキドキするような状況におかれた時に、脈のリズムが一定で無くなるのは洞性不整脈と呼ばれ、問題はありません。ただし素人判断は危険なので、リズムの乱れが気になる時には、必ず受診するようにしてください。明らかな不整脈が起きている場合、重篤な病気が隠れていることが多々あるため、定期検診で不整脈を指摘されたら細かい検査をしてもらうことが必要です。

【症状】

「咳」「呼吸困難」「尿量の変化」などが見られます。いずれにしても不整脈を起こしている根本の病気を探ることが大切です。

◉フィラリア症

 蚊の媒介によって、寄生虫の一種「犬糸状虫」が犬に寄生し、右心房と肺動脈に住み着くことで起こる症状を言います。住み着いたフィラリアが幼虫を産み、その幼虫が血管に移動します。その血管を別の蚊やブヨが刺し血液を吸い取った時に、フィラリアの幼虫は蚊やブヨの体内に吸い取られます。そして蚊やブヨの体内で脱皮を繰り返し成長します。蚊やブヨが次の動物を刺した時に、またフィラリアが動物の血管に入り混む、という方法で感染が広がっていきます。現在、日本での感染は少なくなっていますが、人にも感染するので予防することが大切です。

【症状】

 血液の循環が妨げられるため、様々な腫お嬢が起こります。「咳」「運動をしなくなる」「血を吐く」などのわかりやすい症状以外にも「むくみ」「腹水」「肝臓肥大」など、ご家族が見落としがちな症状も見られます。寄生数が多い場合は規制臭が血管を塞いでしまい、急激に症状が悪化することもあるので注意が必要です。

まとめ

犬の心臓病について、病気についてや新しい知見をまとめました。高齢犬にとって心臓病の罹患率は高く、多臓器とも連鎖してくる大切な病気です。この記事を読んでもらい、家族のワンちゃんの状態を知ることで些細な体調の変化を早期に気づき、早期治療を行い、家族の笑顔を増やしていきましょう!

いよいよ最終回、第3回 猫の心臓病を次に説明していきましょう!猫ちゃんの心臓病の症状は、とてもとてもわかりづらいため、心臓病を知ることはとても大切ですよ。

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