皆さんの猫ちゃんは、ぽっちゃりしていませんか?
いつも顔ばかりをみて接することが多いと思いますが、お尻から見ると客観的に肥満気味かどうか評価しやすいです。改めて自分の猫を、ぽっちゃりしていないかたまにチェックしてみてくださいね。
何故、今回肥満についてお話ししようと思ったかというと、それは肥満が一つの原因で病気になっている子に診療で多く接することが多いから。
犬の飼い主さんは、肥満に対する意識は高いんです。それは、椎間板ヘルニアとか膝が緩くなる膝蓋骨脱臼とか、、、いくつか肥満が原因で悪化する病気が多く知られているだけでなく、きっと犬の場合お散歩でお散歩仲間に会って、やはりそこでぽっちゃりしているねーとか、あれ?~さん家の~ちゃん、少しぽっちゃりしたんじゃない?とか、周囲の目があるからだと思います。それに比べ、猫ちゃんは室内飼育のため、写真でしか周囲の目にさらされることはない為、甘やかしてしまう事と運動範囲に限界がある為と思います。
ここ最近では猫のおやつの種類も多く、また飼い主と猫のコミュニケーションツールとしておやつを利用する機会が増えたことが原因と考えます。そのおやつはヒトと同様、嗜好性が高く高カロリーなものが多いので、通常の食事以外におやつを与えればそれは、オーバーカロリーになりますよね・・。
肥満は最も一般的な栄養障害と考えられていて、40%ものペットが肥満であると言われています。肥満が重要視されるのは、それが様々な疾患の発病に関係し、また既存の疾患を悪化させる可能性を持つ為です。肥満は、変形性関節症/脊椎症・心肺機能の諸問題、糖尿病・便秘・皮膚炎・麻酔の危険性・平均寿命の短縮といった問題の発生率の増加と関連しています。
肥満の定義
肥満とは、体脂肪が過剰な量で蓄積すること、と定義されています。一般的に猫の体重が、至適体重よりも10%多い場合は”過体重”に分類され、至適体重を20%超えた場合には”肥満”に分類されます。下記の表にて、現在の体重とボディコンディションスコアにて理想体重を推定します。この表を用いて、理想体重は単純な計算式を利用して算出されます。
例えば・・・
現在の体重=8kg | |
現在のBCS=5/5あるいは9/9(〜40%の体重過剰) | |
理想体重=100/140×8kg=5.7kg |
肥満が原因で引き起こされる疾患
猫において、過体重および肥満の猫と疾患との関連性について評価した2つの大規模研究も報告されており、主な関連疾患として認められたのは、糖尿病・皮膚疾患・跛行・下痢であり体重過剰の猫では寿命がより短いとも言われています。
猫の肥満が皮膚疾患・糖尿病・運動障害の発生率に及ぼす影響
◉体重過剰、インスリン抵抗性、糖尿病の関係
猫が最も多く罹患する糖尿病は、ヒトの”2型”糖尿病に類似しており、そのため猫では肥満がその主要なリスクファクターとなっています。俗に、ご飯をたくさん食べて病気になるということからハッピー糖尿病と言われることもあります。また、糖尿病の猫では糖尿病ではない猫よりもインスリン感受性が優位に低下していることが確認されています。
◉皮膚疾患
猫のアクネ・脱毛症・様々の様相の皮膚炎・鱗屑形成・皮膚糸状菌症が引き起こされるとされていますが、その原因として肥満により効果的なグルーミングを行う能力の低下が言われています。
◉整形外科疾患
犬と同様、猫でも肥満は整形外科疾患の危険因子となる可能性があり、ある研究では正常なボディコンディションスコアの猫と比較して、肥満猫は跛行する率が5倍高いことが証明されています。また整形外科的な疼痛は、肥満猫においてグルーミングが減り、その結果皮膚疾患に罹患しやすくなることの原因の一つとして考えられています。
ただ、猫では犬より飼い主から自立している傾向があり、整形外科疾患が存在していても体を自ら休めるため、飼い主が簡単にその異常に気づかない可能性があります。ジャンプ能力の低下とジャンプする高さの低下が顕著に症状を示すため、その様子に飼い主は注意する必要があります。経験上、跛行を示す多くの猫で、減量後には可動性が著しく改善するため、犬と同様に跛行している肥満猫に対しては減量を行うべきです。
◉消化器疾患
肥満猫は正常な猫に比べ、下痢・肛門嚢疾患・炎症性腸疾患・大腸炎・巨大結腸症・便秘症の罹患率が高いと言われています。
◉肝リピドーシス(脂肪肝)
肥満猫における2-3日間の絶食は、肝臓の代謝異常を引き起こし脂肪肝となることが知られており、場合により命を落としかねない状態となります。絶食が2日以上続く場合強制給餌が必要とあるため、早期病院へ行くことをお勧めします。
◉腫瘍
肥満と腫瘍の関連性はある可能性があると言われているが、明確な解明にまでは至っていません。
◉尿路系疾患
肥満と関連性があります。猫の肥満との関連で最も注目すべき下部尿路疾患は、特発性下部尿路疾患と尿石症です。また、肥満と腎臓病の関連性はあまり明確ではありません。
減量を達成するために最適なエネルギー摂取量
減量開始時の1日あたりのエネルギー要求量を下記に示しました。
体重過剰の猫に推奨されるエネルギー摂取量
BCS | 1日のカロリー摂取量/kg理想体重 |
3.5あるいは4.0 | 30kcal ME |
4.5あるいは5.0 | 40kcal ME |
目標体重に基づいた1日の食事量
理想体重(kg) | エネルギー配分量 (kal ME/日) | ドライフードg (3000kcal ME/kg) | ウェットフードg (600kcal ME/kg) | ドライフード+ウェットフード (ドライフードg/ウェットフードg) |
3 | 105 | 35 | 175 | 15/100 |
3. 5 | 120 | 40 | 200 | 20/100 |
4 | 140 | 45 | 230 | 25/100 |
4.5 | 160 | 50 | 270 | 35/100 |
5 | 175 | 60 | 290 | 40/100 |
5.5 | 190 | 65 | 320 | 45/100 |
6 | 210 | 70 | 350 | 50/100 |
栄養的治療を確実にするため、食事の性状は、ドライフード・ウェットフード・ホームメイド食といった、いつもの食事と同じものにします。
この表に基づいて食事を給餌し、3-4週間ごとに体重測定しスコア化し評価します。減量速度は、理想的には1週間に1-2%と言われており、この割合で減量ができているか検討し、再評価し、必要なエネルギー量を換算し減量プログラムを検討します。
しかしこの評価が適正か否かは、最終判断が獣医師の見解が必要なため、獣医師と相談し実施しましょう。